2021年5月、私は新卒で入った会社を辞めてフリーランスのWebライターになりました。1ヶ月後、住民税の納付書が14万2,300円届き、同じ時期に毎月の国民年金保険料1万6,610円ものしかかってきて呆然としたのを覚えています。市役所の年金窓口で「免除を受けたい」と相談しましたが、結果は対象外。前年(会社員フル12ヶ月)の所得が基準を超えていたためです。そのとき初めて、国民年金の免除には条件があり、しかも全額・4分の3・半額・4分の1・納付猶予の5種類に分かれていることを知りました。本記事では2026年最新の所得基準と申請手順を、私の体験を交えて整理します。
国民年金の免除条件は5種類|まず全体像
国民年金保険料の免除制度は、所得が少ない人が保険料を払えずに「未納」状態になるのを防ぐ仕組みです。未納と免除では将来の年金額がまったく違うので、条件に当てはまるなら必ず申請しておくべき制度です。免除には5つの区分があります。
| 区分 | 保険料の支払い | 申請対象者 |
|---|---|---|
| 全額免除 | 0円 | 本人・世帯主・配偶者の前年所得が基準以下 |
| 4分の3免除 | 月4,480円(2026年度) | 本人・世帯主・配偶者の前年所得が基準以下 |
| 半額免除 | 月8,960円(2026年度) | 本人・世帯主・配偶者の前年所得が基準以下 |
| 4分の1免除 | 月1万3,440円(2026年度) | 本人・世帯主・配偶者の前年所得が基準以下 |
| 納付猶予 | 0円 | 20歳以上50歳未満の本人・配偶者の前年所得が基準以下 |
2026年度(令和8年度)の国民年金保険料は月1万7,920円です。全額免除なら0円、4分の1免除でも月4,480円が浮きます。なお別枠で「学生納付特例」(学生対象)と、令和8年10月から始まる「育児免除」(子が1歳まで・所得要件なし)もあります。
私が窓口で職員さんに最初に説明されたのは「免除と未納はまったく別物」という点でした。免除は受給資格期間にカウントされ、全額免除なら将来の年金の半分(税金分)は受け取れます。一方、未納は受給資格期間にすら入りません。経済的に苦しいなら、放置せず必ず申請する。これが鉄則です。
全額免除〜4分の1免除の所得基準早見表
5区分のうち4つは「前年所得」で判定されます。所得基準の計算式は以下の通りです(日本年金機構の公表値)。
| 区分 | 所得基準の計算式 | 単身(扶養0人)の目安 |
|---|---|---|
| 全額免除 | (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円 | 67万円以下 |
| 4分の3免除 | 88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 | 88万円+控除 |
| 半額免除 | 128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 | 128万円+控除 |
| 4分の1免除 | 168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 | 168万円+控除 |
| 納付猶予 | (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円 | 67万円以下(50歳未満) |
注意したいのは「年収」ではなく「所得」で判定される点です。給与所得者なら給与所得控除後の金額、フリーランスなら売上から経費を引いた金額が所得になります。たとえば単身フリーランスで売上150万円・経費90万円なら所得60万円となり、全額免除の基準67万円を下回るため対象です。
私自身は2025年の所得が約290万円でした。単身なら4分の1免除の168万円も大幅にオーバーですが、夫がいるので世帯主・配偶者の所得も合算判定されます。我が家は完全に対象外ですが、フリーランスは収入が読みづらいので、毎年12月に「来年の所得が基準を割りそうか」を確認するクセをつけています。経費を計上した結果、想定より所得が低くなって対象になる年もあるからです。
免除判定は「本人・世帯主・配偶者」の全員が基準以下である必要があります。実家暮らしで本人の所得は低くても、世帯主(親)の所得が高ければ免除は通りません。一人暮らしを始めて世帯分離すれば本人の所得だけで判定されるケースもあります。
学生納付特例と納付猶予の条件
学生と50歳未満の若年層には別の支援制度があります。所得基準と対象者の違いを整理します。
学生納付特例は、大学・大学院・短大・高専・専修学校などに在学している学生本人の所得が118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等以下なら、保険料の納付が猶予される制度です(日本年金機構)。家族の所得は問われません。本人がアルバイトでガンガン稼いでいない限り、ほとんどの学生は対象になります。申請には学生証または在学証明書が必要です。
納付猶予制度は、20歳以上50歳未満で本人・配偶者の所得が全額免除の基準(単身67万円)以下の人が対象です。世帯主(親)の所得は判定対象外なので、実家暮らしで親の収入が高くても本人と配偶者の所得が低ければ通ります。実家を出られない若年フリーランスにとって現実的な選択肢です。
これら2つは「免除」ではなく「猶予」です。受給資格期間にはカウントされますが、追納しない限り将来の年金額には反映されません。一方、全額免除や半額免除は追納しなくても税金分(2分の1)は支給されます。
私の同年代のフリーランス仲間(35歳・独身)は、2024年に売上が落ち込んで年所得が60万円台まで下がったとき、納付猶予を申請して通りました。彼女は「免除と猶予の違いを知らなかったので、てっきり一生もらえなくなると思っていた」と話していて、制度を正しく理解するだけで決断のハードルが下がるのを実感しました。
免除を受けると将来の年金はいくら減る?
免除した期間は、将来の老齢基礎年金の額が「満額」より減ります。減り方は区分ごとに固定された割合があり、計算は機械的です。2026年度の老齢基礎年金満額は年84万7,296円(月7万608円)で、これを基準に区分別の影響を整理します。

| 区分 | 支給率 | 1年分の年金額への影響 | 追納すれば? |
|---|---|---|---|
| 全額免除 | 1/2(税金分) | 年約1万円減 | 追納で満額に戻る |
| 4分の3免除 | 5/8 | 年約7,800円減 | 追納で満額に戻る |
| 半額免除 | 6/8(3/4) | 年約5,300円減 | 追納で満額に戻る |
| 4分の1免除 | 7/8 | 年約2,600円減 | 追納で満額に戻る |
| 納付猶予・学生納付特例 | 0(受給資格期間のみ) | 年約2万円減 | 追納で満額に戻る |
注目したいのは「全額免除1年分でも、未納と違って年金が約半分は確保される」という点です。全額免除を1年受けて将来の年金が約1万円減ったとしても、その間に貯金や生活再建ができれば十分メリットがあります。65歳から20年受給すれば差は約20万円。これを「大きい」と取るか「許容範囲」と取るかは家計次第ですが、私は確実に申請する派です。未納にして年金がゼロになるくらいなら、半分でも確保すべきだと考えるからです。
納付猶予と学生納付特例は、追納しないと将来の年金額に反映されません。受給資格期間(10年)にはカウントされるので「無年金」は防げますが、満額に近づけたいなら社会人になってから追納するのが基本戦略です。
免除申請の手順|3つの方法と必要書類
申請窓口は3パターン、必要書類は意外とシンプルです。私が2021年に窓口に行ったときは10分ほどで手続きが完了しました(対象外という結果でしたが)。
方法1:市区町村役場の国民年金担当窓口。住民登録している自治体の役所で申請できます。初めての人にはこれが一番安心です。窓口で職員さんに記入を手伝ってもらえ、その場で不備があれば指摘してもらえるからです。
方法2:年金事務所。最寄りの年金事務所でも申請可能です。役所より平日空いていることが多く、年金関連の手続きを他にもまとめて済ませたいときに便利です。
方法3:電子申請(マイナポータル)。マイナンバーカードがあればオンラインで完結します。マイナポータルからねんきんネットを連携した上で「国民年金保険料免除・納付猶予申請書」のページから手続き可能です(日本年金機構)。学生納付特例も電子申請に対応しています。郵送提出も認められています。
・国民年金保険料免除・納付猶予申請書(窓口・年金事務所で入手 or 公式サイトからDL)
・基礎年金番号通知書またはマイナンバーカード
・本人確認書類
・失業による申請の場合:雇用保険被保険者離職票や雇用保険受給資格者証など
・学生納付特例の場合:学生証(両面コピー)または在学証明書(原本)
申請のタイミングは「保険料の納付期限から2年1ヶ月前まで遡って」可能です。たとえば2026年6月に申請すれば、2024年5月分まで遡って免除を受けられます。「免除があると知らずに未納にしてしまった過去分」も救済対象になるので、未納が気になる人は今すぐ窓口に行く価値があります。
追納で満額に戻す|10年ルールと節税効果
免除を受けた期間は、後から保険料を払い直す「追納」が可能です。経済的に余裕ができたら追納することで、将来の年金額を満額まで戻せます。ただし、追納には「10年ルール」と「加算金」という2つの制限があります。
10年ルール:追納できるのは、追納が承認された月の前10年以内の免除期間に限られます。10年を超えるとその期間の保険料は二度と納められません(日本年金機構)。たとえば2026年6月に追納する場合、2016年6月分以降が対象です。学生時代に納付特例を受けて社会人になった人は、入社から10年で追納の窓が閉じるので注意が必要です。
加算金:免除を受けた翌年度から3年度目以降に追納する場合、当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされます。たとえば令和8年度に平成28年度分(10年前)を追納する場合、全額免除月額の追納額は1万6,850円となります(日本年金機構)。早めに追納するほど加算金は少なく済みます。
追納した保険料は全額が「社会保険料控除」の対象になります。年収400万円のフリーランスが12ヶ月分(約20万円)を一括追納すると、所得税・住民税で合わせて4〜6万円の節税効果があります。年金額を増やす効果と合わせて、実質負担は大きく下がります。
追納の手続きは年金事務所への申請書提出が必要です。承認後に納付書が届き、金融機関やコンビニ、ペイジー対応のネットバンキングで納付できます。フリーランス仲間で過去に納付猶予を受けていた友人は、所得が安定した5年目に12ヶ月分を一括追納し、確定申告で約5万円の節税につながったと話していました。「将来の年金が増える+今の税金が減る」の二重メリットは見逃せません。
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まとめ|免除条件3ステップ判定
国民年金の免除条件を判定する手順は次の3ステップです。まず本人・世帯主・配偶者の前年所得を確認し、次に5区分のどこに当てはまるかを早見表で照合、最後に申請窓口を選んで書類を提出する。たったこれだけです。
- ① 全員の所得を確認:本人・世帯主・配偶者の前年所得を、確定申告書か源泉徴収票で把握する
- ② 5区分のどこかチェック:所得基準は全額免除67万円/4分の3 88万円/半額128万円/4分の1 168万円が目安
- ③ 申請窓口を選んで提出:役所か年金事務所、またはマイナポータルから電子申請。2年1ヶ月前まで遡及申請可
未納のまま放置すると将来の年金は1円も受け取れなくなりますが、全額免除なら半分は確保できます。経済的に苦しい時期こそ、申請が最大の防御策です。私自身は対象外でしたが、年金事務所で「免除と未納の違い」を10分聞いただけで、その後の判断が変わりました。まずは窓口に相談する一歩から始めてみてください。次のアクションとして、「自分の前年所得が67万円・88万円・128万円・168万円のどのラインを超えているか」を確認することをおすすめします。
よくある質問
Q1. 国民年金の免除はさかのぼって申請できますか?
A. はい。申請月から2年1ヶ月前まで遡って免除を申請できます。過去の未納分も救済対象になるので、未納が気になる場合は早めに年金事務所に相談しましょう。
Q2. 全額免除と未納はどう違うのですか?
A. 全額免除は保険料0円でも受給資格期間にカウントされ、将来の年金の2分の1(税金分)が支給されます。未納は受給資格期間にも入らず、年金額にも反映されません。将来もらえる年金額に大きな差が出ます。
Q3. 免除を受けても将来の年金はもらえますか?
A. もらえます。全額免除なら満額の2分の1、4分の3免除なら8分の5、半額免除なら8分の6、4分の1免除なら8分の7が支給されます。納付猶予と学生納付特例は受給資格期間にはカウントされますが、追納しないと年金額には反映されません。
Q4. 免除の申請に必要な書類は何ですか?
A. 国民年金保険料免除・納付猶予申請書、基礎年金番号通知書またはマイナンバーカード、本人確認書類が基本セットです。失業による申請の場合は雇用保険被保険者離職票、学生納付特例の場合は学生証または在学証明書が追加で必要です。
Q5. 追納はいつまでにすればいいですか?
A. 免除を受けた月の前10年以内に追納する必要があります。10年を超えると追納できなくなり、その期間の年金額は減ったままになります。また、免除を受けた翌年度から3年度目以降に追納する場合は加算金が上乗せされるので、早めの追納がお得です。
- 日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」: nenkin.go.jp(所得基準の計算式・対象者の条件)
- 日本年金機構「国民年金保険料の追納制度」: nenkin.go.jp(10年ルール・加算額・節税効果)
- 日本年金機構「国民年金保険料の学生納付特例制度」: nenkin.go.jp(学生納付特例の所得基準)
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」: nenkin.go.jp(2026年度老齢基礎年金満額84万7,296円)
- 日本年金機構「令和8年度における国民年金保険料の前納額について」: nenkin.go.jp(2026年度国民年金保険料月1万7,920円)