転出届のためだけに役所へ行く必要は、もうありません。電子証明書が有効なマイナンバーカードがあれば、マイナポータルから転出届を出せて、窓口へ足を運ぶのは転入の1回だけになります。2023年2月6日に始まった「引越しワンストップサービス」の仕組みです。私はこれを知らないまま港区役所の待合室で50分待ち、そのあと新居の市役所でもう一度並びました。この記事では、申請の流れ、オンラインで出せない6つのケース、転入時に持っていくもの、そして見落とすとカードが失効する「転入から90日」の期限までを整理します。
転出届はマイナンバーカードがあれば窓口に行かずに出せる
電子証明書が有効なマイナンバーカードを持っていれば、転出届は役所へ行かずにマイナポータルからオンラインで提出できます。デジタル庁が進める「引越しワンストップサービス」の一環として2023年2月6日に始まった仕組みで、旧住所の市区町村への転出の届出と、新住所の市区町村への来庁予定日の連絡が、1回の申請でまとめて送信されます。
もう一つ大きいのが、紙の転出証明書を受け取らなくてよくなる点です。マイナンバーカードを使う転出は住民基本台帳法第24条の2の「転入届の特例」(いわゆる特例転出)にあたり、転出したデータが住民基本台帳ネットワークを通じて転入先の市区町村へ直接送られます。転入の窓口では転出証明書の代わりにマイナンバーカードを提示すれば手続きが進むため、「転出証明書をなくして再交付してもらう」という事故そのものが起きません。
| 項目 | マイナンバーカードなし | マイナンバーカードあり |
|---|---|---|
| 転出届の出し方 | 旧住所の役所へ来庁、または郵送 | マイナポータルからオンライン |
| 転出証明書 | 交付される。転入時に必ず持参 | 交付されない(住基ネットで転送) |
| 役所の窓口に行く回数 | 2回(転出+転入) | 1回(転入のみ) |
| 転入時に必要な書類 | 転出証明書+本人確認書類 | 引越す人全員のマイナンバーカード |
| 根拠 | 住民基本台帳法 第22条〜第24条 | 同法 第24条の2(転入届の特例) |
注意したいのは、オンラインで完結するのは転出側だけだという点です。転入届は新住所の市区町村の窓口へ行く必要があり、これはマイナンバーカードを持っていても変わりません。オンラインでできるのは来庁予定日の連絡までです。「窓口1回」とは、転出のための来庁がまるごと消えるという意味です。
みくの体験|転出届だけのために2時間を溶かした:私が港区役所へ転出届を出しに行ったのは2024年11月5日の火曜日、引越しの2週間前でした。フリーランスなので有給休暇という概念がなく、待ち時間の50分と往復の移動を合わせた約2時間は、そのまま稼働できなかった時間です。文字単価3円の記事を1本書けたと考えると、体感の損失は1万円前後でした。転入手続きで新居の市役所に行ったとき、職員さんに「次からは転出はマイナポータルで出せますよ」と言われて、初めて存在を知りました。
マイナポータルで転出届を出す手順|申請から「完了」まで

手を動かす前に、次の3つが揃っているかを確認します。ここが欠けていると申請の途中で止まります。
- 電子証明書が有効なマイナンバーカード(電子証明書の有効期間は発行から5回目の誕生日まで)
- カードを読み取れる機器(マイナンバーカード読み取り対応のスマートフォン、またはICカードリーダライタを接続したパソコン)
- 3種類の暗証番号(署名用は英数字6〜16桁、利用者証明用と券面事項入力補助用はそれぞれ数字4桁)
カードの電子証明書はスマホにも載せられます。Androidは2023年5月11日から「スマホ用電子証明書搭載サービス」、iPhoneは2025年6月24日から「iPhoneのマイナンバーカード」が始まりました。登録しておけば、申請のたびにカード本体を取り出して読み取らせる必要がなくなります。引越し前後は財布やカードケースを段ボールに入れてしまいがちなので、登録しておくと転出届以外の手続きでも効いてきます。
先に確認|オンラインで出せない6つのケース
次のどれかに当てはまる場合はオンライン申請の対象外です。旧住所の役所の窓口か郵送で手続きすることになります。
- 新しい住所や引越しの日がまだ決まっていない
- マイナンバーカードの券面(住所・氏名)が最新の内容になっていない
- 3つの暗証番号のどれかが分からない、またはロックがかかっている
- 国外へ引越す(海外転出は窓口・郵送のみ)
- 別世帯の人が代理で申請する(委任状が必要なケース)
- 実際には住民登録地に住んでいない、DV等支援措置の対象になっているなどの個別事情がある
また、世帯主だけが引越して残る人が2人以上いる場合は、オンラインで転出届を出したあとに、残った世帯で世帯変更届(世帯主変更届)を14日以内に出す必要があります。残るのが1人だけならその人が自動的に世帯主になるため不要で、世帯主以外の人だけが引越す場合も手続きは要りません。
申請から受理までの5ステップ
準備が済んだら、次の流れで進めます。
- マイナポータルにログインし、メニューから「引越しの手続」を選ぶ
- 引越し予定日・新しい住所・引越す人(自分と同一世帯の家族はまとめて申請できる)を入力する
- 転入先の市区町村と、窓口に行く来庁予定日を入力する
- マイナンバーカードで電子署名して送信する
- マイナポータルの「申請状況照会」を開き、表示が「完了」に変わったことを確認する
5番目を飛ばすと事故になります。送信した時点ではまだ受付が終わっておらず、旧住所の市区町村が内容を審査したうえで受理されます。処理にかかるのは多くの自治体で2〜3開庁日が目安で、葛飾区はおおむね2〜3開庁日、横浜市はおおむね3開庁日としています。土日祝をはさむと1週間近くかかることもあります。「完了」を確認しないまま転入の窓口へ行くと、そこで転出が済んでいないことが判明して出直しになります。
みくの体験|夫の半休は要らなかった:2024年11月の引越しは夫と2人分の手続きでした。夫はIT系の会社員で、11月5日の午後に半休を取って港区役所まで来ています。私と2人で待合室にいた時間はおよそ50分、往復を含めれば夫の半休はほぼこれだけで消えました。いま同じ引越しをするなら、私1人がマイナポータルで2人分をまとめて送信できるので、この半休はまるごと不要です。夫婦や家族での引越しほど、来庁が人数分消える効果は大きくなります。
窓口に行くのは転入の1回だけ|持ち物と3つの期限
マイナンバーカードを使う転出入では、期限が3つ並走します。どれか1つでも落とすと、せっかくのオンライン申請が無駄になったり、カードが使えなくなったりします。
| 手続き | 期限 | 過ぎるとどうなるか |
|---|---|---|
| オンライン転出届 | 引越し予定日の30日前から、引越した日の10日後まで | オンライン申請ができない。窓口か郵送に切り替える |
| 転入届 | 住み始めた日から14日以内(かつ転出予定日から30日以内) | 特例転出が使えず、旧住所から転出証明書を取り寄せる必要がある |
| マイナンバーカードの継続利用 | 転入届を出した日から90日以内 | カードが失効し、再交付に1,000円かかる |
転入届の14日という期限には法律の裏づけがあります。住民基本台帳法第52条第2項では、正当な理由なく届出をしなかった場合に5万円以下の過料と定められており、実際に過料に処すかどうかは簡易裁判所が判断します。届出が遅れたときのリスクは別の記事で詳しく整理しました。
住民票を移さないと5万円|引越し後14日の届出義務とデメリット
転入の窓口へ持っていくもの
オンラインで転出届を出した場合、転入の窓口で提出するものは紙ではなくカードです。
- 引越した人全員のマイナンバーカード(世帯でまとめて申請した場合は全員分)
- 利用者証明用の暗証番号(数字4桁)。窓口で自分で入力します
- 運転免許証などの本人確認書類
- 国民健康保険や国民年金の加入者は、その手続きに使う書類
暗証番号は窓口で本人が入力する場面があるため、家族の分をまとめて手続きするなら、事前に全員分を確認しておいてください。ここで止まると、一緒に済ませるつもりだった国民健康保険の切り替えなども後日に持ち越しになります。
みくの体験|転入届のついでに健康保険まで終わった:私が港区から東京西部へ引越したのは2024年11月19日の火曜日、午後フリー便で段ボール24箱を運んだ日です。転入届を出したのは翌20日の水曜日でした。14日以内の期限には余裕がありましたが、窓口で「国民健康保険の住所変更もこの番号札のまま続けられます」と案内され、結果的に1回の来庁で健康保険まで終わりました。転入届は他の手続きの入口になっているので、早めに片づけるほど後がラクになります。
つまずくのは暗証番号・券面・処理待ちの3か所

① 暗証番号のロック
マイナンバーカードの暗証番号は、署名用電子証明書(英数字6〜16桁)が5回連続、数字4桁のものが3回連続で間違えるとロックされます。ロックされるとオンライン申請はそこで止まります。前回カードを使ったのが確定申告のときだけ、という人は要注意です。
ロックされた場合、署名用と利用者証明用の両方がロックしているときは役所の窓口で初期化・再設定が必要になります。片方だけなら、スマートフォンのアプリとコンビニのキオスク端末で解除できる自治体もあります。引越し直前に気づくと窓口へ行く羽目になるので、申請を始める前に一度ログインして通ることを確かめておくのが確実です。
② 券面の住所・氏名が古い
結婚や前回の引越しでマイナンバーカードの券面追記を済ませていないと、オンライン転出届は使えません。カード裏面の追記欄と、いまの住民票の住所が一致しているかを先に見ます。ここがずれていたら、オンライン申請には進めません。先に券面事項の変更手続きが必要です。
③ 処理待ちの間はコンビニ交付が止まる
転出の処理が完了すると、旧住所での住民票の写しや印鑑登録証明書のコンビニ交付は使えなくなります。転入手続きが終わるまでは新住所でも取れないため、この期間はコンビニで証明書が取れない空白ができます。旧住所の窓口では転出予定日まで住民票の写しを出せますが、印鑑登録は転出で消除されるため印鑑登録証明書は取得できません。転職や賃貸契約で書類が要る予定があるなら、転出届を出す前に必要枚数を取っておくと安全です。
転入から90日でマイナンバーカードは失効する
見落としやすいのが継続利用の手続きです。転入届を出した日、またはそこから90日以内にマイナンバーカードの券面追記と記録の変更をしないと、カードは失効します。失効したカードを作り直すには、カード800円と電子証明書200円を合わせた1,000円の再交付手数料がかかります。初回の交付は無料で、この1,000円は紛失・破損・失効といった作り直しのときだけ発生する費用です。
ここだけは押さえる:転入届と継続利用の手続きは、同じ窓口で同じ日にまとめて終わらせられます。90日という猶予に甘えて後回しにする理由はありません。転入届のときに「マイナンバーカードの住所も変えてください」と一言添えるだけで、この90日問題は消えます。
みくの体験|カードの追記欄は転入届と同じ日に埋めた:私は転入届と同じ日にカードの継続利用まで済ませました。窓口で4桁の暗証番号を入力する場面があり、券面の追記欄に新住所と日付が印字されて返ってきたのが2024年11月20日です。逆に、ライター仲間のCさんは転入から2か月放置していて、確定申告の時期にe-Taxへログインできず慌てていました。カードは「転入届と同じ日に住所を書き換えるもの」と決めておくのが一番ラクです。
転出届を最短で終わらせる手順の全体像
マイナンバーカードを持っているなら、転出のために平日の役所へ行く必要はありません。引越しの前後でやることを、時系列で並べ直します。
| タイミング | やること | 期限・目安 |
|---|---|---|
| 引越し日が決まったら | マイナポータルにログインし、暗証番号と券面の住所を確認する | 申請前に必ず |
| 引越し前 | マイナポータルの「引越しの手続」から転出届+来庁予定日を送信 | 引越し予定日の30日前〜引越した日の10日後 |
| 送信後 | 「申請状況照会」が「完了」に変わったか確認する | おおむね2〜3開庁日 |
| 引越し後 | 新住所の窓口で転入届。全員分のカードを持参する | 住み始めた日から14日以内 |
| 転入届と同時 | マイナンバーカードの継続利用(券面追記)まで済ませる | 転入届から90日以内 |
手続きと並行して見積もりを取るなら、費用の相場を先に知っておくと業者との交渉がラクになります。
一人暮らしの引越し費用相場は3万〜7万円|距離と時期の早見表
次のアクションは、引越し日が決まった時点でマイナポータルにログインしてみることです。ログインできれば暗証番号は生きており、券面の住所が最新かどうかも同じタイミングで確認できます。ここさえ通れば、転出届の申請自体は入力するだけで終わります。転入の来庁予定日は後から変更できる自治体が多いので、仮の日付でも早めに申請しておくほうが安全です。
転出届以外にもやることが積み上がるのが引越しです。抜け漏れを防ぐには、手続き全体を一覧で押さえておくのが早道です。
住所変更の手続き一覧18項目|14日以内の期限と時短の回り方
みくの体験|次の引越しでは窓口を1回に減らす:2024年11月の引越しで私が窓口に使った時間は、11月5日の転出と11月20日の転入を合わせて約3時間でした。次に引越すときは転出をオンラインにして、窓口は転入の1回だけにするつもりです。フリーランスにとって平日の2時間は売上に直結するので、この制度を知らなかった当時の自分に一番伝えたいのは「引越しが決まったらまずマイナポータルを開く」の一行です。
よくある質問
マイナンバーカードがなくても転出届は出せますか?
出せます。旧住所の市区町村の窓口へ行くか、郵送で請求する方法があり、この場合は紙の転出証明書が交付されます。転入の窓口ではその転出証明書を提出します。オンラインで出せないだけで、転出届そのものができなくなるわけではありません。
転出届をオンラインで出したあと、引越しをやめたらどうなりますか?
転出予定日の前日までなら、マイナポータルから申請を取り消せます。転出予定日の当日以降になると、旧住所の市区町村の窓口での手続きが必要になるため、予定が変わった時点で早めに取り消すのが確実です。
同じ市区町村内での引越しでもオンライン申請できますか?
同じ市区町村内の引越しは転出届ではなく転居届になります。転居届もマイナポータルの「引越しの手続」から来庁予定日の連絡ができますが、届出そのものは窓口での手続きが必要です。対応内容は自治体ごとに差があるため、住んでいる市区町村のページを確認してください。
転入届の14日を過ぎてしまいました。どうすればいいですか?
期限を過ぎても届出はできますので、気づいた時点ですぐ窓口へ行ってください。ただし転出予定日から30日、または住み始めた日から14日を過ぎると特例転出が使えなくなり、旧住所の市区町村から転出証明書を取り寄せる必要が出てきます。あわせて、正当な理由がない場合は5万円以下の過料の対象になります。
スマホだけで転出届の申請は完結しますか?
マイナンバーカード読み取りに対応したスマートフォンがあれば完結します。Androidは2023年5月11日、iPhoneは2025年6月24日からカードの電子証明書をスマホに載せられるようになっており、登録しておけばカード本体を読み取らせる手間もなくなります。ICカードリーダライタを接続したパソコンでも申請できます。
出典・参考
- デジタル庁「引越し手続はマイナポータルで」(引越しワンストップサービス リーフレット・PDF)
- デジタル庁「2025年6月24日から『iPhoneのマイナンバーカード』を開始予定です」
- e-Gov法令検索「住民基本台帳法」(第22条〜第24条の2・第52条)
- 横浜市「マイナンバーカードを持っている人のオンラインによる転出届」
- 葛飾区「マイナポータルによるオンラインでの転出届(引越しワンストップサービス)」
- 静岡市「転出届:マイナポータルを利用したオンライン申請」
- 船橋市「マイナンバーカードをお持ちの方の転出・転入の届出(転入届の特例)」
- 広島市「住所変更などの届け出が遅れるとどうなるのですか」(住民基本台帳法第52条第2項)
- 豊島区「マイナンバーカードの継続利用について」
- 江戸川区「マイナンバーカードの暗証番号初期化・再設定」
- 神戸市「マイナンバーカードの再交付手数料」(カード800円・電子証明書200円)
- 横浜市「世帯変更届(世帯主の変更、世帯の分離、合併等)」